広島県福山市と岡山県倉敷市という、中国地方の大都市に囲まれた岡山県 笠岡市。
北部は緑豊かで、南部は瀬戸内海に面した7つの有人島をもつ、温暖で住みやすいまちです。
子育て支援の充実した政策を打ち出し、幅広い年代の移住・定住を促進している笠岡市。空き家バンクにVRを導入し、ビッグデータを活用したSNS施策なども行っており、2022年には第一回日経 自治体DXアワードの「行政業務/サービス変革部門」部門賞を受賞しました!
今回は、笠岡市 政策部定住促進センター・主事の片山様にお話を伺いました。
目的 | 集客力アップ・空き家バンクの促進 |
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用途 | 空き家バンクへの掲載 |
業種 | 地方自治体 |
団体名 | 岡山県笠岡市 |
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所在地 | 岡山県笠岡市中央町1番地1(笠岡市役所) |
URL | https://www.city.kasaoka.okayama.jp/ |
緊急事態宣言下で「車で10分の空き家」が内見できない⁉
– 本日はインタビューにご協力いただきありがとうございます。笠岡市様には、今までにセミナーなどでお話をいただく機会もありましたね。まずは、片山様の行っている業務内容と、部署のご紹介をお願いいたします。
片山さま:
私は、笠岡市 政策部定住促進センターという部署に所属しています。
業務内容としては、定住の促進や移住希望者の支援が主になります。
具体的には、空き家バンクの運営、移住相談員とめぐる市内案内ツアー、笠岡市の暮らしを体験できるお試し住宅の提供など。
加えて、シティプロモーションも担当しているので市のPRや婚活イベント、定住者への助成金の受付など、多岐にわたる業務を行っています。
– 業務の幅が大きいですね!
片山さま:
「地域おこし協力隊」も担当部署になるので、若い方が笠岡市に移住してきたら、地域と繋がるまでサポートしたりすることも。
多世代同居の支援や、空き家の解体に対する助成金なども担当しており、住まいや暮らしに関する全般が業務範囲です。

– 笠岡市では2021年11月からスペースリーを導入しているということですが、導入のきっかけを教えてください。
片山さま:
元々、笠岡市は高齢化による空き家対策や移住希望者への住居をサポートするため、空き家を買いたい人と売りたい人のマッチングを行う「空き家バンク」には力を入れていました。
コロナ禍で、都市部から地方移住に関する相談は以前より増えたのですが、実際に現地へ足を運ぶことができないために、移住を諦めるケースが相次いでしまいました。
また、緊急事態宣言下では、車で10分で笠岡市まで来ていただける方からの内覧の問い合わせであっても、県をまたぐ移動ができないというルール上お断りせざるを得ないこともありました…。
– コロナ禍で人が来られないということが深刻な問題になっていたのですね。
片山さま:
それまでは誰でもどこからでも来ていただけるのが当たり前だったので、スタッフも戸惑いました。
空き家開拓作業にも力を入れていましたが、コロナ禍では家主さんも笠岡市に帰ってこられない状況だったので、全体的に業務がストップしてしまったのです。
コロナ禍が長引くにつれ、この問題をどうしようかと本当に困っていました。なにか良い方法がないかと探していたところ、スペースリーのVRに出会いました。
遠方からでも家の中を360度リアルに確認できるところが笠岡市の課題解決にぴったりだと思い、VR空き家内覧をすぐに導入しました。
事前VR内覧で空き家案内の効率化を実現
– 現在は、スペースリーのVRを空き家バンクに掲載する形で活用いただいていますね。

片山さま:
はい。それと、移住希望者の方が笠岡市の暮らしを体験できる「お試し住宅」の中を撮影して公開しています。
また、今後は幼稚園や保育園の中を撮影して公開したいとも考えています。
子育て関係の問い合わせを受けられるチャットボットが始まったので、相談とあわせて施設内の様子もVRで見ていただければと思っております。
保育所はクローズドな場所ということもあり市内にお住まいの方でも施設見学の機会も多くはないので、保育園や幼稚園選びの参考になればと思っています。
VR空き家内覧に取り組んで感じたのが、「普段見えない所が見える」ということが、一番皆さんの興味を引くのかなということです。
– 空き家バンクについては、今までだいたいどのくらいの件数の撮影をされていますか?
片山さま:
現在空き家バンクに公開されている物件は、約100件弱だと思います。その数を下回らないように、開拓と掲載を回しています。
掲載しているVR自体は、現在約50件ですね。掲載物件の約半数はVR化できていることになります。
空き家バンクに登録する際は、現地で間取り確認やVR撮影を家主さんの立ち合いのもと行いますが、VRは360度撮影されてしまうので、撮影に興味がある家主さんが映り込まないように配慮するのが少し大変な時はあります(笑)。ですが、撮影自体はすぐに終わりますよ。
– スペースリーを導入してどんな効果がありましたか?
片山さま:
良い意味で細部まで全部見えるので、気に入る物件と気に入らない物件の判断が早いです。
事前にVRで物件を確認してくださっている方が増えてきたので、現地案内をする際には気になる箇所だけササッと見る方が多くなりました。
「室内はVRでだいたい分かってるから、給湯器だけ自分の目で確認したかった」「床のきしみ具合を知りたかった」など。
導入当初はそういった声はあまり多くなかったのですが、1年ほど続けてみて「VRを見てから内覧に来ている」という方が多くなった感覚はあります。
– 写真だけの掲載のときは現地で見てから決める、という方が多かったのですね。
片山さま:
例えば見たい物件が5件あったとして、場所が遠いと1日に5件回るのが不可能な場合もあります。そして空き家を見に行ったとしても、「思っていたのと違う」とがっかりされることもしばしば。
VRを導入してからは事前に空き家の中を見てもらうことが可能になったので、内覧が5件から2〜3件になるなど、利用者にとっても職員にとっても無駄な案内時間が減った感覚があります。
– 成約数などに変化はあったのでしょうか?
片山さま:
コロナ禍でしたが、昨年はVRを導入したこともあり、成約件数としては年間約50件を維持しています。
今は会計年度任用職員2名程度でこの事業を回してるので、空き家の案内ができる時間や労力にも限度があり、このあたりが成約件数のボーダーかもしれません。
撮影やホームページにアップするための補助職員は1名いるのですが、基本的には撮影、案内、空き家の開拓も全て2名で行なっています。
それでも笠岡市は、岡山県内トップを争う空き家バンクの成約件数です。
– 撮影に慣れるまでの体制づくりはどんなことをしたのか、教えてください。
片山さま:
最初はスペースリーの藤原さんに撮影のレクチャーに来ていただき、そこからは比較的スムーズに運用できています。
担当職員が30代で慣れるのが早かったこともあるかもしれませんが、一般的にスマホが使えてカメラが使える方だったら問題なく受け入れられると思います。
編集やアップロードも、1台のタブレットをみんなで共有しながらやっています。
第1回 日経自治体DXアワード 行政業務/サービス変革部門で部門賞を受賞
– VRを活用された結果、第1回 日経 自治体DXアワード2022の部門賞を受賞されたとのこと。
片山さま:
今年の3月の話ですね。「行政業務/サービス変革部門賞」で部門賞を受賞させていただきました。

スペースリーとのVR空き家内覧の取り組みと、Yahoo! JAPANが運営するオープンコラボレーションハブ「LODGE」とのふるさと納税返礼品PR活動におけるVR空間の活用、それらを評価していただきました。
– メタバース空間のプランニングなども、片山様がされたのですか?
片山さま:
笠岡市では私とふるさと寄附課 職員を中心とし、VR空間の構築やコンテンツ企画についてはYahoo! JAPANが運営するオープンコラボレーションハブ「LODGE」を中心に、お互いに協働して行いました。
コロナ禍で往来が難しい中でもまちの魅力を県外の方に知っていただきたく、自治体初のVR空間でのふるさと納税PRイベントに取り組みました 笠岡産シャインマスカットや牡蠣を参加者のもとにお届けし、VR空間内で生産者との交流や、360度画像による観光疑似体験ができるイベントです。
VR空間でのイベントは新しい価値創造を目的としたDXの取り組みですが、空き家問題をテクノロジー活用で解決するスペースリーとの連携は、私は別の軸で良いDXの取り組みだと思っています。
– 他にも、片山様は移住・定住者へのPRにSNSを活用されて、ビッグデータを使った分析もされているそうですね。
片山さま:
SNSは Instagramを運用しています。ビッグデータでトレンドを毎日チェックするようにしているのですが、生活者の求める情報を先取りして分析することができるので、情報発信にはもってこいのツールです。

実際に笠岡市のInstagram投稿でもビッグデータから生活者のニーズをキャッチし戦略を立てて投稿しており、フォロワー増やリーチ拡大にも寄与しています。
ビッグデータを活用したSNS運用は、これからも継続していきたいと思っています!
– 他の自治体さんでは、運用上の懸念を示されたり、内部からの反発があるというお話もあります。笠岡市ではそういうことはありませんでしたか?
片山さま:
2021年当時の所長が寛大な方で「自由にやっていいよ」とおっしゃってくださり、すごくやりやすかったですね(笑)。今もその流れを汲んでいると思います。
– 課の皆様が、比較的デジタルに対して寛容である、受け入れ体制ができているということですね。
片山さま:
「こうじゃなきゃいけない」という固定概念はない職場だと思いますし、年齢層が30〜40代メインで、若々しい人が多いのも一因かもしれません。
「DXをするためのDX」 笠岡市の自治体DXの展望
– これから先どんなことをやっていきたいのか、笠岡市のDXの展望をお伺いできればと思います。
片山さま:
「DXの推進」は庁内でも言われており、大きな動きとしてありますが、目の前の業務でいっぱいいっぱいでそもそもDXの施策を考える時間がないという部分はどの自治体にも共通課題としてあると思います。
つまり、DXを進めるために、まずは事務作業の軽減など、業務削減を行わなければなりません。そこにテクノロジーを入れて職員一人ひとりの業務を軽減し、時間や余裕を生み出し、価値創造ができる環境をつくることがまず最初にやるDXだと、私は思っています。
スペースリーさんには、新しいVRの使い方があればぜひ笠岡市をフィールドとして使っていただきたいと思っています!
– 周辺の自治体の方にもスペースリーをご紹介をいただいているとお聞きしています。
片山さま:
市長が空き家バンク・移住支援のVRをすごく気に入ってくださっています。
広域連携の会議などの場で市長自らVR空き家内覧の話をしてくださり、「笠岡市が空き家問題に関して面白い取り組みをやってるみたいだ」という口コミが近隣を中心に広がっているみたいですね。
– 周りの市区町村の方も、空き家VRには興味をお持ちなのですね。
片山さま:
多くの自治体が、空き家問題を急ピッチで対策しなければ、という危機感をお持ちだと思います。ただ、すぐに上手くいく問題ではないので、テクノロジーを使った解決手段と聞くと気になると思います。
しかし、VRなどの新しいテクノロジーのツールを使うことが目的になってはいけないと思っています。目的は市内外の方との良好なコミュニケーション。そのために地域の課題を知り、解決の手段としてDXを活用できるかもと考えて実際に行動することが大切だと思います。
– 今後とも、笠岡市様と協働してさまざまなことにチャレンジしていければと思います。貴重なお話をありがとうございました!
最後までお読みいただきましてありがとうございました。
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